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2019/12/16

中国組織が暗躍し麻薬密輸は瀬取り化 フィリピン「超法規的」取締継続へ

中国組織が暗躍し麻薬密輸は瀬取り化 
フィリピン「超法規的」取締継続へ


人権問題などを主に報じる「ブナ―ル・ニュース」などの報道によると、
フィリピン麻薬取締局(PDEA)のアーロン・アキノ長官が
12月12日に発表したところでは、
フィリピン国内での麻薬摘発捜査はまだ続いており、
複数の州知事や村長、村議会議長クラスの人物たちが麻薬ビジネスを運営したり、
関与している疑いがあり、摘発のために監視活動を続けているという。


特に州知事など地位の高い公職にある疑惑の人物については
「厳しい監視を続けている」
と強調、
証拠が固まり次第逮捕する方針を示唆した。



そのうえで現在フィリピン国内では確認されているだけで
186の麻薬シンジケートが麻薬密輸、
密売の活動を続けているという。



この中には最近摘発した中国人の大物麻薬業者の
リアン・ホン
容疑者も含まれていることを明らかにした。
彼はマニラ近郊で4カ所の秘密麻薬製造工場を運営していた。

ホン容疑者は中国本土の麻薬王といわれる

ドラゴン・ウー

の一派で、
別の麻薬王

ウーピン・チェン

の組織とも関係が深いとされている国際的な麻薬犯罪者だったという。



フィリピン捜査当局の手入れを察知したためかトルコのイスタンブールに「高跳び」する直前にホン容疑者は逮捕された。



このほかにPDEAなどはこれまでに
ドラゴン・ウー
のグループメンバーとみられる10人の麻薬犯罪容疑者を逮捕するなど
組織壊滅に向けた捜査を進めている。




海上で引き渡す「瀬取り」が増加

PDEAのアキノ長官によると、ドゥテルテ大統領が強力に麻薬対策を進めているために、これまでの麻薬密輸のルートや方法が姿を消し、

最近は大型船舶に積み込んだ麻薬を防水パッケージに梱包してフィリピン東海岸沖で海中に投下。

これを小型船舶が回収してフィリピン国内に持ち込む、一種の
「瀬取り」
方式が大半を占めていると分析している。



この方式での密輸には海上を浮遊する麻薬のパッケージを
ダイバーが泳いで回収、小型船舶に揚げて運ぶのだが、
PDEAはこうしたダイバーもすでに数人身柄を確保して
背後の組織に関する捜査を続けている。



ダイバーの大半は沿岸地域の元漁民で
「(摘発時は)漁業者を装うが麻薬回収の専門ダイバーとして
組織の末端で密輸を手伝っている」
とみている。



海洋当局などによるとフィリピン東海岸は島が多く、
小型船舶による漁業も盛んなために摘発は困難だが、
潮流の関係で回収が不能になり海上を漂流しているパッケージも多く、
それを押収する事例も頻発しているという。



PDEA関係者によると最近は漂流を回避するためにパッケージに
位置情報を発信するGPSや自動追跡装置を装着していることも多く、
密輸も巧妙化しているという。

<米中、メキシコ、コロンビアとも協力>

ドゥテルテ大統領が推進する麻薬犯罪対策の超法規的措置では
2016年6月の大統領就任以来、
これまでに約6000人が犠牲となっていると警察などはしているが、
人権団体や犠牲者の家族などの情報を総合すると
死者は約1万人ともいわれている。



2018年には麻薬犯罪の容疑者と間違われて17歳の少年が
警察官たちに射殺されるなど
麻薬犯罪容疑者以外の犠牲者がでるケースも報告されている。



とはいえ、現在も国民の約80%からの
支持を得ているドゥテルテ大統領は
その支持をテコに強力な麻薬犯罪対策を今後も継続することを表明しており、
特に麻薬犯罪に関与している政治家の取り締まりを徹底するとしている。



そうしたドゥテルテ大統領の姿勢を受けてPDEAは、
フィリピンを経由して麻薬が流れているとされる米国、
フィリピンの麻薬犯罪組織と密接な関係がをもつ犯罪組織が本拠地とする中国、
さらに麻薬犯罪が多いメキシコやコロンビアの関係当局と
情報交換や捜査協力を強化していく方針を明らかにしている。



アキノPDEA長官はフィリピン全土にある17,000の市町村から麻薬を一掃する
「麻薬フリー化作戦」
を続ける方針を掲げている。
これまでにリストアップされた麻薬犯罪容疑者12,000人のうち
8,700人を逮捕。残る容疑者の逮捕・摘発にも全力を挙げ、
ドゥテルテ大統領の任期が終わる2022年までに
フィリピンから麻薬犯罪を根絶することを目標とすると強調している。

2019/09/30

モンテンルパ 2004 塀のない刑務所 (BU)



「6人に1人」。これ、何のことかわかりますか?
 実は外国に出かけた日本人の海外トラブル経験者数です(2003年2月外務省による世論調査)。年間1700万人が海外に出かけ、90万人が海外で暮らす今、日本人がトラブルに巻き込まれる件数は想像を遥かに越えています。たいていが不注意から生じる、スリ、置き引き、強盗などの被害が、中には逆に、加害者となってしまうケースの被害もあります。
 ここにひとりの日本人死刑囚がいます。1994年12月7日、麻薬不法所持でフィリピン初の日本人死刑囚となった男。男の名は鈴木英司(スズキヒデシ)。しかし男は無罪を主張。彼に突然おとずれた転落の人生とは? そして彼が目にした驚くべきフィリピンの刑務所の実態とは? この話を他人事だと思っているあなた!
 あなたのすぐ後ろにも魔の手は忍びよっているのです!!

 「麻薬の運び屋」
 日本の友人に渡してほしいと現地の人間からお土産を渡される。
 だがその中には麻薬が隠されていて、空港のセキュリティで気付いた時には後の祭り。
 現行犯逮捕となり、実刑判決となる。麻薬保持は国によっては無期懲役、さらには死刑という場合もある。

転落
 1994年4月、バコロイドという田舎の飛行場で、鈴木氏は突然、逮捕された。空港のセキュリティを通るとき、「お土産に」と渡されたお菓子の箱の中から、なんと大麻が1500グラムも発見されたのだ。土産を渡したのは、前夜、抱いた娼婦。実は鈴木氏は、金を返すというA氏に呼ばれフィリピンを訪問していた。しかし貸した金は、びた一文もどらず、揚げ句の果てに麻薬捜査官によって身柄を拘束。自由の身にしてやると、逆にA氏に金をせがまれ、気が付いた時には死刑判決を受けていたという。
 収監されてから10年、48歳になる鈴木氏は、今なお、獄中から無罪を主張しつづけている。


フィリピンの刑務所(モンキーハウス)

モンキーハウス
 フィリピン人たちは刑務所のことを「モンキーハウス」と呼ぶ。なぜならそこは、人間という名のサルが金とボスという地位を求め、卑劣にうごめいているからだ。囚人ばかりでなく看守までもがそう呼ぶ。1995年6月6日、鈴木氏はバコロドから首都マニラのあるルソン島のモンテンルパ刑務所に移送された。そこは、第二次大戦後、山下奉文大将ら80人の日本軍人が処刑された場所だ。フィリピンの刑務所が日本の刑務所と大きく違う点は、面会人がガラスで隔てられることなく、直に堂々と会えることだ。
 だが、違いはこれだけではない。

掟(オキテ)
 モンテンルパは国が運営する刑務所であるにも関わらず、囚人たちは家賃を払わなくてはならない。さらに衣類、食事、電気、水道…すべての生活必需品が有料である。
 ここでは金の無いものは野たれ死にするしかないのだ。しかも外国人は金がありそうだということで自動的にVIP待遇になる。ところがVIP待遇とは名ばかりで、まず外国人は、部屋を買うところからスタートする。モンテンルパの囚人は6300人。その監視をわずか50人の看守で行わなければならない。
 そこで看守と囚人たちとの間で不思議な協力関係が生まれた。モンテンルパには13のギャング団があり、そのボスを「コマンダー」と呼ぶ。各「コマンダー」が中心になって縄張りにしている棟や房の治安維持に務めているのだ。

 金がかかるのは生活費だけに留まらない。
 ギャングへの上納金が毎週50ペソ(150円)。
 看守のタバコ代として毎週100ペソ(300円)。
 さらにカンパという名目の交際費が週に2、3回要請される。
 ちなみに主な生活費のお値段は、扇風機付き部屋60,000円、電気代(月)600円、水道代(月)600円。

食事
 刑務所から唯一配給されるのが日々の食事。コーヒーカップ1杯の茶色のご飯とめざし1本。コーヒーカップ1杯の具なしスープ。これでなんと1日分。足りない分は所内のコンビニで買う。ここは刑務所であるにも関わらず、小さな町を形成しているのだ。
 売店には公営と私営の2種類ある。公営といっても実は所長が経営する「PX」という売店が所内に3箇所。私営の売店は「ティンダハン」といい、囚人たちが個々に経営している。違いは「PX」では売られていない肉や魚、野菜などが置いてあることだ。
 売り買いされるものは生活用品だけでない。マッサージや靴磨き、手紙の代筆にネイルアート、さらにマリファナ、売春婦まで…表の世界以上に無法地帯なのだ。
 塀の外のギャング団や外国人のシンジケートが買い付けにくることも珍しくないらしい。

ビッグタイム
 金がすべてを支配するモンテンルパ。では超大金持ちは?
 彼らは通称「ビッグタイム」とよばれ、その刑務所暮らしは別荘で休日を楽しんでいるようである。レンタルビデオを生業とするティー・ハンキー。彼は元最高裁判事を父に持つ殺人犯。権力を発揮して、上映前の最新映画を借しだしている。元フィリピン遊戯・娯楽協会の会長アンベッドは高額ギャンブルを取り仕切る。彼が主催するギャンブルはプロバスケットの勝敗やバカラ、1回で何万ペソもの大金を動かす。人気アクション・スター、ロビン・パディリアは刑務所内で映画撮影をやってのけた。このニュースはフィリピンのワイドショーの格好の話題となり、揚げ句の果てにマスコミを利用し恩赦を勝ち取った。
 そして最大の「ビッグタイム」がロメオ・アロスホス下院議員。罪は少女強姦。
 所内に自前のテニスコートとバスケットコート、付帯施設の喫茶店とレストランを作り、歯痛を起こした際には歯科治療室まで作った。また刑務所オフィスビル内に個人事務所があり、議員としての執務をそこでとり行った。

獄中結婚
 モンテンルパには時間的な制約があるほかは、厳しい規則がない。集団生活の掟さえ守っていれば、生活費はかかるが自由の身だ。実は鈴木氏は、刑務所慰問のボランティアの女性と獄中結婚し、2歳になる子どもまでいる。

日本大使館
 こういった犯罪に巻きこまれた時、日本大使館はどう対処してくれるのだろうか?
 鈴木氏の場合はこうだった。「事情は分かりました。しかし失礼ながら、この国やタイなどの東南アジアでは、そうした事件を起こした全ての人が“知らなかった”と言います。無実と言われるのなら弁護士を雇って裁判で勝てばいいと思いますが…」
 有罪無罪の真偽は問わず、大麻不法所持で海外に収監されている日本人は74名いるという。もしあなたに無実の悲劇がおとずれたら、一体どう対処しますか?
 あなたが鈴木氏の立場だったら、モンテンルパの生活に耐えることはできますか?