かちわり【Over Dose】③(BU)
12月だ
拘置所に送られた俺、
奈良の盆地にある拘置所は、寒さが身にしみるほど寒い。
朝目を覚ますと、窓の結露した水滴が凍っている。
昼間でも、ロングダウンを着ていても寒い。
えらい所に来たもんや、
まだ、留置は暖房が効いてるが、ここにはそんな物はない。
寒さとと闘う毎日に、うんざりさせられた。
18日の日に、嫁はんが面会に来て
子供にあげるXmasプレゼントについて話をしたのを覚えている。
手紙は毎日欠かさず来てるので、
なんとか、この寒さを凌ぐ材料になっていた。
毎日がいつもと同じ毎日で
何の変化もない、
唯一、風呂の窓の外に見る景色が、自然豊かで心が癒されるくらいのもんや、
毎日来ていた手紙が来なくなった。
嫁はんは、今回俺がパクられた事が相当ショックを受けていて、
荒れた生活を思わせるような内容の手紙が多かった。
口や、手紙ではプーもポンもやってない
と
言うとったけど
やっているのは分かってはいたが、口には出さなかった。
手紙がない事が気になってはいたが、
深く考えてはなかった。
呑気に、過ぎ行く毎日をこなしていた時だった。
忘れもしない、12月25日
Xmas
面会人がやって来た。
俺は、嫁はんとばかり思っていたんやが、
担当が言うには、
「弟さん夫婦や」
と、
俺は、なん疑問も持たずに、
(おーっ、珍しい、弟が来るやなんて)
と、思いながら面会室へ入った、
俺、「よー、メリークリスマス!久しぶりやなぁ」
弟、「お兄ちゃん、気ィ落ち着けて聞いてや」
開口一番
そんな事を言いよった。
俺、「おー、どないしてん?」
弟、「20日の日にな、お姉さん亡くなりはってん。」
俺、「・・・・・・」
俺の頭の中は、真っ白になった。
駆け巡る、電気信号が一気に遮断されて、機能を失ったかの様だ。
時間が止まり、視界は真っ白、
何分間経ったんだろうか?
今度は、一気に稲妻のような電気信号が頭の中に落ちてきた。
(ODか?、ん、間違いな!)
色んなパターンが頭の中を駆け巡ったが、
一番多かったシグナルが
【OD】
だった、
詳しく話を聞くと、
第一発見者は、子供で、
朝、起きたら お母さんが、ソファーの下で寝てたので、
起こしてみたが、起きないので、布団を掛けて
自分は、学校に行ったらしく
学校から帰ってきた時も、お母さんが同じ状態で寝ていたので、
おかしいと思い、普段から言ってあった、
何かあったら電話でこのボタン押したらおじいちゃんとこにかかるんで
その時は、そうせなあかんで、
と
言う言葉どうり、おじいちゃんに電話をした。
おじいちゃんが来るまでに、床に落ちていた注射器を片付けて
おじいちゃんを待った。
おじいちゃんがやって来て、
状態を見て、即、警察に連絡をしたらしい。
警察と、救急車がやって来て、お母さんをビニールの袋に入れて
部屋から連れて行かれたそうだ。
それを聞いた俺は、
怒りを覚えた、
こんな大事な時に死にやがって!
俺より先に、死にやがって!
後に1人になって、子供の事を考えると
涙が、溢れ出してきた、
俺は、何してるんや!
俺、「担当、ー、出してくれー出してくれー」
その日の夜は、
俺の先日声が、拘置所の廊下に響き渡っていた。
こうして、俺は、最愛のパートナー、同士である
嫁はん
を失ったのだ。
ODで死んだ身の回りの人間は、
全部で
11人
である。
心肺蘇生で助かった命は、
4人
である。
俺は、神様がXmasに与えてくれた
この素晴らしいプレゼントのことは、一切頭の中の回路から
シャットアウトした。
先のことしか見ないことにした。
しかし、独居では、かなり苦しかった。
しかし、人間乗りこれない壁は無いんである。
時間とと言う素晴らしい解決方法が存在するのだ。
1年の辛抱である。
新しい女の事を考えるようになった。
その後、俺は、
奈良地裁で、5年の判決を貰い、
控訴するために、大察拘置所へと移送となった。
大阪では、独居は拒否し、雑居に入った。
雑居の方が、考える事がないからだ、
その為に、眠剤も、辞めた。
その後俺は、大拘で2年間過ごして、
懲役へと、赤落ちしたのである。
これが、「かちわり GameOver OverDose」の
終わり
人生の
節目
2000年
これから、第二章
人生が始まる。
現在では、第三章の人生を過ごしている。
新しい嫁はんが出来、
第一章とは
全く次元の違う生活を経過中である。
第一章の人生はまるでRPGのゲームの中で
プレイヤーとして、
イケイケのプロファイルを持った、
登場人物
最後までクリア出来ずに
GameOver
してしまった。
GameOver
が
あって、今の俺が居る。
新たなステージで、新たなプレイヤーで、
家があり、車があり、
小さかった子供は、」大人になり、
孫が、出来てもおかしくない。
前の嫁はんは死に、
母親も死に、
世界は変わった。当然生き方も変わった。
人生、一体ないが起こるかわからない、一寸先は闇なんや、
悔いのない人生を送ったモン勝ちやで。
人間には、寿命と言うタイマーがセットされていて、
どんな人生を歩もうと、セットされた時が来たら
それで、パオなのだ。
どれだけ楽しんだか、経験したか、色々な世界を見たか、
まだ、若い人なら、見えない世界をどれだけ発見できるか。
悔いのない、人間と言う時間を過ごせることを
祈ってます
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